移植
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当院での小腸移植待機中におけるIFALD症例の経験と早期発見における現在の方針
高瀬 洪生上野 豪久松木 杏子東堂 まりえ岩崎 駿出口 幸一正畠 和典野村 元成渡邊 美穂神山 雅史田附 裕子木村 武司奥山 宏臣
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s215_1

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抄録

【目的】腸管不全関連肝障害(IFALD)の当院での経験を提示し、早期発見及び適切な管理方法ついて考察することを目的とした。

【方法】脳死小腸移植登録を行なった患者のうちIFALD発症例について、血液検査や肝生検所見、小腸・肝移植施行、経過について検討した。IFALDは総ビリルビン>2.0mg/dlと定義した。

【結果】対象は3例であった。1例は15歳時に上腸間膜静脈血栓症を契機に短腸症に至った。21歳時にIFALDを発症、肝硬変に至り発症後9ヶ月後に生体肝移植を先行したが、液性拒絶を合併し肝不全が進行し、肝移植から6ヶ月後に死亡した。1例は先天性微絨毛萎縮症に対して16歳時に生体小腸移植を施行したが、慢性拒絶にて29歳時に移植小腸を摘出し短腸症となった。31歳時に感染症を契機にIFALDに至り、肝不全が進行し2ヶ月で死亡した。1例は7歳時に中腸軸捻転を契機に短腸症に至った。21歳時よりIFALDを発症し、腎不全も併発したため多臓器移植目的に22歳時に当院転院となったが、多臓器不全が進行し転院後2ヶ月で死亡した。これらの経験からIFALDは発症すると急速に進行し治療困難となるため、現在は小腸移植待機患者に対して、3ヶ月毎に肝線維化マーカーであるMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)を測定、また1年毎に経皮肝生検を施行し肝線維化の早期発見に努めている。

【結論】IFALD発症後急速に進行し死亡した症例を経験した。現在はIFALD発症前から肝線維化の早期発見に努めている。

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