2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s263_2
【緒言】
2020年初頭より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内外で蔓延している.免疫抑制下である腎移植後患者における当院でのCOVID-19症例の経験を報告する.
【対象•方法】
2022年4月現在当院でフォロー中の腎移植後患者363例のうちCOVID-19感染症を発症した26例を対象とした.それらの患者背景,COVID-19罹患状況,予後,重症化のリスク因子について検討を行った.
【結果】
年齢は46歳(24-84)で,男性15例,女性11例であった.発症時ワクチン2回接種完了した症例は9例であった.軽症が16例,中等症Iが3例,中等症IIが2例,重症は5例であり,3例が死亡した.6例でDexamethasoneを投与し,Favipiravir/Molnupiravir/Remdesivir/Tocilizumabはそれぞれ2例で投与され,7例でSotrovimabを投与した.重症の2例は人工呼吸器及びCHDFにて管理されたが,循環呼吸動態改善乏しく死亡した.また軽症の1例は自宅療養期間解除後に急変し他院に搬送された後に死亡した.また糖尿病が有意な重症化リスク因子であり(p=0.032),ワクチン2回接種と重症化との関連は有意差を認めた(p=0.009).死亡症例は2020年11月から2021年3月及び2021年7月から11月の時期に集中していた.
【結語】
当院フォロー中の腎移植後患者の7.16%にCOVID-19を発症した.糖尿病と発症時期は死亡リスクとの関連を認め,ワクチン接種は重症化を抑制した.死亡に至る重症例も経験し,腎移植後患者へのワクチン接種の推奨及び感染予防の指導が必要であると考えられた.