2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s264_1
背景と目的 COVID-19はAKI(急性腎障害)のリスクであるが、感染後の移植腎機能に与える影響については明らかにされていない。腎移植患者におけるCOVID-19後の臨床経過及び移植腎機能について検討した。対象と方法 COVID-19の腎移植患者36例を対象として、治療内容および罹患前後のeGFR、尿蛋白について検討した。結果 年齢は44.4±16.6歳、男27例/女9例、BMI 22.0±3.8kg/m²、糖尿病を9例(25.0%)で認めた。ABO不適合9例(25.0%)、複数回の移植は4例(11.1%)であり、移植後の経過年数は8.3年(IQR 4.7-18.4)であった。罹患時の重症度は、軽症17例(47.2%)、中等症Ⅰ10例(27.8%)、中等症Ⅱ 2 7例(19.4%)、重症 2例(5.6%)であった。入院による加療は22例(61.1%)に対して行われており、入院期間は14日(IQR 5.8-18)であった。免疫抑制薬の調整を27例(75.0%)に行い、調整期間は21日(IQR 13-39.5)であった。デキサメタゾンは25例(69.4%)、トシリズマブは2例(5.6%)で使用されていた。罹患前・後(2-4カ月以内)のeGFR は 51.4±22.2 ml/min/1.73m²・53.9 ±24.4ml/min/1.73m²であり、有意な変化を認めなかった(p=0.127)。また、罹患前後のeGFR変化率を重症度(軽症群:中等症1以下、重症群:中等症2以上)で比較した。軽症群2.1%(IQR-5.0-6.9)、重症群5.3%(-2.6-18)であり、両群に有意差を認めなかった(p=0.197)。結語 腎移植患者においてもCOVID-19のAKIに留意する必要があるが、COVID-19が短期的な移植腎機能に与える影響は少ないと考えられた。