移植
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腎移植レシピエントにおけるSARS-CoV2ワクチン接種後の抗体価の推移
佐々木 元長谷川 香織高田 祐輔田邉 起田中 博原田 浩三浦 正義
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s270_2

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抄録

[緒言]腎移植レシピエントにおけるSARS-CoV2ワクチン(以下ワクチン)接種後の抗体獲得状況を報告する。[対象と方法]COVID-19罹患歴がなく、ワクチン接種前にSARS-CoV2抗体(以下抗体)陰性が確認され、2回のワクチン接種後に抗体価を測定した成人腎移植症例378例(R群)を対象とした。健常者(HV群: n=990)、腎移植ドナー(D群: n=102)を比較対象とした。2回のワクチン接種後にN抗体陰性(0.4U/ml以下)かつS抗体陽性(0.8U/ml以上)を抗体獲得と判定した。[結果]ワクチン2回接種後のS抗体獲得率は、HV群とD群では100%であったがR群で56.8%であった。レシピエントの抗体獲得率を検出時期別に解析すると、HV群、D群では4週以降、100%であるが、R群は4週未満で43%、4-8週で49%、8-12週で68%、12週以降で81%と、徐々に上昇した。抗体価に関しては、HV群とD群はワクチン接種後8週未満ではそれぞれ2457 U/ml、1181 U/mlであったが、20週以降では、727 U/ml、713 U/mlへと低下した。一方でR群は、8週未満では154 U/mlであったが、20週以降では293 U/mlへ上昇した。R群におけるResponder(n=215)とNon-Responder(n=163)を比較すると、Non-Responderで有意に多かった因子は60歳以上、リンパ球減少症(1000/μL以下)、rituximab投与歴、CNI/MMF/EVR/MPによる維持免疫抑制であった。[結語]腎移植レシピエントは、SARS-CoV2ワクチン接種後の抗体価上昇に時間を要した。60歳以上、リンパ球減少症、rituximab投与歴、4剤の維持免疫抑制療法は、抗体獲得に負の影響を与えた可能性がある。

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