移植
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腎移植患者におけるSARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体獲得状況
升谷 耕介出口 英孝坂本 篤彦中村 信之岡部 安博三浦 敬史羽賀 宣博廣松 賢治鍋島 茂樹
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s270_1

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抄録

【目的】腎移植患者におけるSARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体獲得状況を検討する。

【対象と方法】対象は維持期の腎移植患者107例、女性40例(37%)、年齢49±12歳、生体腎移植93例(87%)移植後期間9±6年。接種前と2回目接種から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、3回目接種を受けた患者については接種1ヶ月後に血液を採取し、SARS-CoV-2 S-protein receptor binding domain のリコンビナント蛋白を抗原としたELISA法を用いて抗体測定を行った。性・年齢をマッチさせた健常人57例を対照群とした。

【結果】対照群における2回目接種後の抗体陽性率は100%で、1ヶ月後の抗体値(中央値)は129.0 A.U.であったが、腎移植群における1ヶ月後の抗体陽性率は34.5%、陽性者の抗体値は4.6 A.U.と著しく低値であった(P<0.001)。3ヶ月後、6ヶ月後に腎移植群の抗体陽性率は31.9%、25.2%と緩徐に低下したが、3回目接種後に抗体陽性率は54.0%となり、陽性者における抗体値も72.5 A.U.と大きく上昇した。健常者では観察期間を通じて抗体陽性率は100%を維持し、抗体値は3ヶ月後35.3 A.U.、6ヶ月後17.7 A.U.と低下したが、3回目接種から1ヶ月後には284.5 A.U.と著明に上昇した。

【結論】わが国の腎移植患者における抗体獲得率および抗体価は海外の報告と同様、著しく低値であるが、3回目接種により抗体陽性率、抗体値ともに改善する。

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