移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
後期高齢者となった肝移植後患者への療養支援
山本 洋子菊本 さやか原 麻由美
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s280_3

詳細
抄録

【はじめに】

臓器長期生着に伴い、肝移植後患者の高齢化が進み、家族の介護負担は増加している。そのため、生活環境の変化に合わせた支援が必要である。今回、後期高齢者となり療養支援が必要となった症例を報告する。

【症例・経過】

Y氏70歳代女性、PSCに対して生体肝移植術を施行した。夫と長女の3人暮らしで、生活の大半は夫婦で過ごし、外来受診は夫の運転で通院していた。20XX年(移植後14年)胆管炎による敗血症で入院し、退院後も胆管炎による入退院を繰り返すようになった。この頃より徐々にADLおよび認知力の低下を認めた。また同時期に夫が脳梗塞を発症し、徘徊を繰り返すなど自宅療養が困難となった。Y氏の自宅退院も検討したが、長女が一人で両親の介護をすることは難しいため、夫と同じ療養施設への入所をMSWと調整し、長女の休日には自宅で過ごすことができるようになった。

【考察】

本人の病状に加え夫が突如として要介護状態となり、ライフスタイルが変化し、家庭内役割の変更が必要であった。支援調整のため、RTCが面談毎に本人や家族の意向と生活状況を確認したことで、円滑に必要な支援を導入することができたと考える。RTCが家族を含め、継続的に生活環境を確認し、多職種で情報を共有することの重要性が示唆された。

【結語】

肝移植後患者の高齢化に伴い、療養支援を必要とする症例が増加する。支援の導入や再考に備え、RTCは患者の生活環境を把握しておくことが重要である。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top