2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s286_2
【緒言】生体腎移植ドナーの長期的予後は、一般人口と同様でQOLも損なわないことが示されている。しかし、高血圧や年齢などの医学的問題を抱えたマージナルドナー(MD)のQOLに関する報告は少ない。今回、当院におけるMDの腎提供後5年間のQOL変化をスタンダードドナー(SD)と比較した。【対象・方法】2009年2月~2021年4月の間に当院で腎提供を経験した症例のうち、SF-36v2を使用したQOL評価を腎提供後1年以上継続して行えた81例(SD40例、MD41例)を対象とし、国民標準値50点と比較した。また、術後の腎機能推移、CVD併発、新規悪性腫瘍発生についても比較検討した。【結果】両群間で術後の腎機能推移、CKD 3b以上の症例数に有意差なく(各群10例ずつ)、CVDや悪性腫瘍発生についても有意差を認めなかった。術前において3つのQOLサマリースコアは国民標準値と比較し高く、両群間で有意差を認めなかった。術後の身体的QOLサマリースコア(PCS)において、術後2か月(53.3 vs 50.1, P=0.03)、術後1年(55.3 vs 52.5, P=0.03)、術後4年(53.8 vs 51.8, P=0.01)、術後5年(53.9 vs 49.5, P=0.03)でMD群はSD群と比較し有意に低下していた。術後の精神的QOLサマリースコア(MCS)、社会的QOLサマリースコア(RCS)においては国民標準値と比較し高く、両群間で有意差を認めなかった。【結語】マージナル生体腎移植ドナーの術前QOLは国民標準値と比べ良好であるが、術後PCSにおいてSD群、さらには一般人口と比較し長期的に低下する可能性があり、今後更なる調査が必要である。