移植
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生体腎移植ドナー不適格の実態調査
井上 國彰堀 俊太橘 進彰西村 伸隆富澤 満米田 龍生森澤 洋介後藤 大輔中井 靖三宅 牧人鳥本 一匡藤本 清秀
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s287_3

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抄録

【目的】献腎移植が極めて少ない本邦において生体腎移植の役割は非常に重要である。生体腎移植は生体ドナーがあってはじめて成立する治療であり、生体腎移植に期待し移植施設を受診しても惜しくも生体ドナーとして不適格となることも経験する。今回われわれは、生体ドナー不適格の実態調査を行った。

【方法】2002年1月~2022年3月の期間に当科に生体ドナー候補として受診した222例を対象とした。後方視的に患者背景情報や検査データを電子カルテより収集した。腎移植に至らなかった割合やその理由について検討した。

【結果】222例中、生体ドナー不適格のため腎移植に至らなかった症例は41例 (18.5%) であった。不適格と判断された理由は、糸球体濾過量低値が最も多く全体の20%を占めた。次いでBack out (ドナーの意思で辞退) が17%、免疫学的ハイリスクが12%、悪性腫瘍が12%、糖尿病が10%とこれらで、全体のおよそ75%を占めた。その他、感染症や肥満等が原因として挙げられた。

【考察】腎代替療法として生体腎移植は透析療法に比較し、生命予後や生活の質が改善されるとされ、患者からの期待が比較的大きい医療である。生体ドナー不適格の実態を知ることは、移植医のみならず腎代替療法に関わる多くの医療スタッフによる、より根拠のある説明を可能とする。

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