移植
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当科での生体腎移植における周術期Daprodustat使用の効果と安全性
佐藤 優野口 浩司久保 信祐目井 孝典加来 啓三岡部 安博中村 雅史
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s290_2

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抄録

【背景】腎移植後の腎性貧血に対しても低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害剤が使用され始めているが、周術期使用の報告はほとんどない。2週〜4週毎に使用するエリスロポエチン製剤(ESA)と比較し、HIF-PH阻害剤は用量調整が行いやすく、周術期の貧血治療に有用である可能性がある。当科では2021年1月以降、周術期にも積極的にDaprodustatを使用しており、その安全性と有効性に関して若干の知見を得たため報告する。

【対象と方法】2019年6月から2022年1月までに当科で生体腎移植を施行した162人のうち、タクロリムスおよびミコフェノール酸モフェチルを用いて免疫抑制導入した18歳以上の初回腎移植患者で、移植後3ヶ月以内に腎性貧血に対してDaprodustatあるいはESAで治療を行った患者を対象とした。周術期アウトカムおよび術後3ヶ月間のHbの推移を比較した。

【結果】Daprodustat群28人、ESA群44人が対象となり、逆確率重み付け(IPTW)法を用いてDaprodustat群25人、ESA群44人とした。周術期の輸血量および合併症に有意差はなかった。移植後3ヶ月のeGFRおよび血栓症・拒絶の頻度にも有意差はなかった。術後3-7日目および2, 3週目のHb値はDaprodustat群で有意に高く、ESA群で最も低値となった術後7日目ではESA群9.3±1.3(g/dL)に対してDaprodustat群10.0±1.5(g/dL)であった(p=0.027)。術後3ヶ月間の反復測定分散分析でもHb値はDaprodustat群で有意に高かった(p<.001)。

【結論】Daprodustatは腎移植周術期でも安全に使用でき、かつ術後の貧血に対して有効であると考えられた。

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