2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s294_2
背景:移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は、臓器移植後の免疫抑制状態により発生する疾患で、臓器移植後に発生する悪性腫瘍のうち多くを占める。PTLDは移植手術後比較的早期に発生し、予後と有意な相関を示すことが報告されている。しかし、膵臓移植手術においては、PTLDの臨床的因子に関して未解明な点が多い。
方法:当院にて2021年までに施行された脳死膵臓移植手術58例を後方視的に参照し、術後にPTLDの発生を認めた症例の詳細を検討した。
結果:58例中3例(5.2%)に術後PTLDの発生を認めた。移植時の年齢は40, 53, 54歳で、原疾患はいずれも1型糖尿病であり、術式はそれぞれPAK, SPK, SPKであった。発見契機は、それぞれ会社健診(便潜血陽性)、ふらつき、頚部リンパ節腫脹の自覚であり、術後88, 14, 17か月にPTLDと診断された。治療はそれぞれ、R-CHOP, 放射線療法, リツキシマブ投与が行われ、治療効果はそれぞれ、腫瘍消失、腫瘍縮小、腫瘍消失を得ていた。治療後は全例で免疫抑制剤の減量が行われ、うち1例ではエベロリムスが追加されていた。予後は、それぞれ腫瘍診断後75か月無再発生存、21か月で他病死、170か月無再発生存という結果であった。
結語:PTLD発生は当院膵臓移植手術症例の5.2%に認められた。少ない症例ではあるがいずれの症例においてもPTLDは制御されていたことから、膵臓移植後のPTLDは適切な治療を行うことで制御し得る病態であると考えられた。