移植
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生体部分膵・腎同時移植13年目に脳卒中をきたした1例
大塚 聡樹長坂 隆治剣持 敬浅野 武秀
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s298_2

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抄録

【緒言】本邦の膵臓移植は、脳死法案の成立により世界と同様な環境下での移植医療となっているが、それ以前には生体膵部分移植が行われた。生体膵移植は高度の医療技術を要しごく一部の医療機関に全国から集まり、術後は生活圏で連携して診ている。今回、維持管理を連携しておこなった1型糖尿病者の生体部分膵・腎同時移植後の症例に脳卒中をきたしたので報告する。【症例】50歳代女性。現疾患は1型糖尿病で、8歳時よりインスリン療法を施行。腎機能低下により腎移植について紹介され、献腎移植、生体膵・腎移植について説明し、2009年2月千葉東病院で生体間移植をおこなっていただいた。血糖値は安定し腎機能も保たれているが、近年は眼科系疾患(眼底出血)、肥満、高血圧等の合併症をきたしている。移植後13年目に近所の出先で 突然、右片麻痺、失語をきたし近隣の急性期病院で治療された。左視床出血であった。その後亜急性期病院でリハビリを行い自力歩行し、発症後3ヶ月目に自宅退院し、通院リハビリをしている。【考案】臓器移植での生命予後は、移植片の喪失、感染症,悪性疾患,心・脳血管疾患等により決まり、その基礎的因子として全身の動脈硬化、高血圧、脂質異常などが挙げられ、これらには免疫抑制剤や生活習慣、糖尿病背景が深く関わっている。多因子が複雑に絡み合っており、生活習慣病の治療薬一つとっても常に免疫抑制にどれほど影響するのか、どれが最善かその指標は確立されていない。更なる検証の積み重ねによる方策の確立が望まれる。

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