移植
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順行性灌流を行った急性大動脈解離に対する全弓部置換術+オープンステントグラフト内装術後脳死ドナー臓器摘出の経験
日高 悠嗣山永 成美日比 泰造横溝 博
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s303_2

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抄録

【症例】30歳代,男性.Stanford A型急性大動脈解離による低酸素脳症で脳死状態となり,オプション提示後の家族同意で脳死下臓器提供に至った.臓器摘出に際する問題点として,大動脈解離による偽腔開存が両側総腸骨動脈まで及んでおり,通常の大動脈カニュレーションでは腹部臓器の灌流が不十分となる可能性が挙がった.当初,通常通り総腸骨動脈分岐部直上の大動脈で真腔と偽腔を確認してカニュレーションをし逆行性に灌流する方針であったが,胸部摘出チームとの協議で弓部置換した人工血管の側枝からカニュレーションをして腹部臓器を順行性に灌流する手技が提案された.実際の摘出手術時は胸部チームにて人工血管の側枝からカニュレーションをし,クロスクランプはせず心停止と同時に臓器保存液で腹部臓器を灌流した.腹部臓器の灌流・脱血は良好で,腹部臓器の摘出は互助制度を活用して熊本大学移植外科と共同で行い,肝臓と両腎を摘出して各施設で移植を行った.心臓・両肺・肝臓・両腎の提供であったが,全臓器生着しており移植後の経過は順調である.【結語】今回の症例は腹部臓器が灌流不十分で臓器提供が断念となる可能性もあったが,カニュレーション方法を工夫することで安全かつ十分な臓器灌流ができ,適切な臓器保存で移植に繋げることができた貴重な症例である.

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