移植
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アラジール症候群に対する肝移植症例の検討
児玉 匡小峰 竜二中尾 俊雅岡田 憲樹清水 誠一内田 孟阪本 靖介福田 晃也笠原 群生
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s328_1

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抄録

【はじめに】アラジール症候群(AGS)は乳児期から慢性胆汁鬱滞を認め、心血管などに肝外症状を伴うことがある遺伝性肝内胆汁鬱滞症であり、乳児期に肝移植が必要になることがある。

【目的】2022年5月までに当院で行われたAGSに対する肝移植を後方視的に検討した。

【結果】15例のAGSに対して肝移植が施行されており、1例が脳死肝移植であった。生体ドナーは全例MRCPを施行し胆管に異常が無い事を確認していた。適応は、全例胆汁鬱滞に伴う肝障害と成長障害であり、うち4例は非常に強い掻痒感でQOLの著しい低下も認めていた。肝外症状では12例(75%)に末梢肺動脈狭窄、11例(69%)に蝶形椎体、9例(44%)に特異的顔貌、6例(40%)に後部胎生環の合併を認めた。男女比は8:7で移植時の月齢中央値は10か月であった。身長体重の中央値は62.2cm(Z-スコア:−3.7)と5.9kg(Z-スコア:-3.0)で、著しい成長障害を認めていた。移植後観察期間中央値は5.4年で、生存率は86.7%であった。術後1、3、5年での身長体重のZ-スコアはそれぞれ-1.9、-1.1、-0.4と-1.1、-0.4、-0.6であり、成長障害の改善を認めていた。移植前に末梢肺動脈狭窄を認めた12症例においては増悪なく、心不全を生じた症例は現時点では認めなかった。

【結語】肝移植が必要になるAGSでは成長障害を認めるが、移植後の成長および経過は良好と考えられる。一方で心血管障害といった肝外病変に対しては移植後も継続した経過観察が重要である。

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