移植
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生体肝移植術後の乳糜腹水に対して血液凝固第XIII因子製剤が奏功した一例
納屋 樹井原 欣幸田村 恵美前田 慎太郎新村 兼康水田 耕一
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s329_2

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抄録

【背景】腹部手術後の乳糜腹水は剥離操作等に伴う合併症で、一般に中鎖脂肪酸を用いた食事療法やソマトスタチンアナログ投与による治療法が知られているが、血液凝固第XIII因子製剤の有用性に関する報告は少ない。今回生体肝移植術後の乳糜腹水に対して第XIII因子製剤の投与が奏功したと考えられる一例を経験したため報告する。

【症例】7ヶ月男児、体重8kg。胆道閉鎖症術後非代償性肝硬変に対し母親をドナーとする生体肝移植を施行した。術中門脈血流障害を認め、ドナー空腸静脈による血管グラフト間置と、後腹膜から側腹部に及ぶ門脈側副血行路の郭清を行った。術後5日目より腹水の増加を認め(max 525ml/kg/日)、術後10日目の肝生検で中心静脈内皮炎を伴う高度T細胞関連型拒絶反応の診断となった。術後11日目よりステロイドパルス療法を行うも腹水量の再増加を認め、術後17日目よりサイモグロブリン療法を開始した。経過中、肉眼的乳糜腹水となり術後11日目よりMCTミルクへ変更したが効果なく、術後21日目には腹水中トリグリセリド(TG)252 mg/dlと増悪を認めた。この時点の第XIII因子活性が25%と低下を認めたため、術後21日目より5日間第XIII因子製剤を投与した。開始翌日より腹水量の減少と性状の改善を認め、腹水中TG は34 mg/dlと低下した。術後37日目にドレーン抜去し術後61日目に自宅退院となった。

【結語】肝移植後乳糜腹水の治療として第XIII因子製剤投与は第一選択肢になり得る。

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