移植
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小児肝移植後に発症した肝静脈狭窄に対する治療選択の検討
中尾 俊雅阪本 靖介小峰 竜二兒玉 匡岡田 憲樹内田 孟福田 晃也野坂 俊介笠原 群生
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s329_3

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抄録

【背景】肝静脈狭窄は小児肝移植後に認められ,グラフト不全の原因となる合併症である.治療方法としては,バルーン拡張,ステント留置及び再吻合術がある.今回我々は当院で経験した肝静脈狭窄症の治療選択及び成績を報告する.

【対象】 2005年11月から2022年4月に肝移植を施行した713例のうち,術後1ヶ月以降で肝静脈狭窄を認めた6例(0.8%)を対象とした.

【結果】移植時平均月齢は43.8ヶ月,性別は男児2例女児4例,原疾患は2例が急性肝不全,2例が胆道閉鎖証,2例がWilson病であった.外側区域グラフトが4例,左葉グラフトが2例,平均GRWRは2.55%であった.術後平均観察期間は7年11ヶ月,術後8年10ヶ月に慢性拒絶反応で死亡した1例以外は肝不全で再移植した1例含め全例生存している.肝移植から初回カテーテル治療までの平均期間は2.83ヶ月.全例でカテーテル治療により肝静脈狭窄は解除できた.バルーン拡張で改善を認めなかった2例及び再発を繰り返した1例でステントを留置した.治療回数の平均は1.5回であり,肝静脈狭窄が再発した3例は平均2ヶ月後に再発した. 

【考察・結語】当院における肝静脈狭窄の頻度は低く,カテーテル治療の成績は良好であるが,カテーテル治療後早期に再発を繰り返す症例があり注意が必要である.またステント留置は再移植時のリスクであり適応を慎重に決定する必要がある.

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