移植
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心停止ドナーにおける右室不全の機序の解明
小谷 恭弘横田 豊山﨑 悟清水 秀二黒子 洋介廣田 真規宍戸 稔聡新谷 泰範笠原 真悟
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s334_2

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抄録

背景:右心不全は脳死ドナー(DBD)からの心臓移植後早期の重要な合併症である。心停止ドナー(DCD)においては、DBDに比べ心停止に至る過程の圧・容量負荷により右心不全のリスクは高くなる。そこで、心停止による心筋の機械的ストレスを明らかにするため、early response geneであるc-jun及びc-fos mRNAに着目した。

方法:鎮静・鎮痛下ラットの気管を結紮し、心停止を誘発した。気管結紮時点を開始点とし、0、15、30、45分の時点で心臓を摘出し、右室自由壁、左室自由壁をそれぞれ採取した。Total RNAを抽出し、cDNAに逆転写を行い、droplet digital PCR法にてc-jun及びc-fos mRNAを定量した。

結果:左室自由壁では、c-jun及びc-fos mRNA量は気管結紮15分後に最大となり、30分後には、結紮0分後の値まで戻っていた。一方、右室自由壁では、c-jun及びc-fos mRNAは 結紮15分後から増加し、気管結紮後30分後にピークを示した。結紮45分後にもc-jun mRNAは増加したままであった。

結語:右室では、左室と比較してc-jun及びc-fos mRNAの上昇が遷延することが判明した。このことは、DCDにおいて右室への機械的ストレスが持続していることを示しており、右心不全の原因となる機械的ストレスを取り除くことが重要であると考えられた。

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