移植
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上葉優位型肺線維症に対する肺移植前後の経過に関する検討~その他間質性肺炎との比較
安井 健藤堂 太右伊藤 智絵長谷川 真人中平 有酒井 勇雅横田 一彦大木 孝裕此枝 千尋佐藤 雅昭中島 淳緒方 徹
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s338_1

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抄録

【目的】上葉優位型肺線維症(PPFE)は間質性肺炎の中でも新しい疾患分類で,特発性に加え造血幹細胞移植後肺障害等による二次性のものがあり,特徴的な臨床像が報告されている.肺移植は進行例における唯一の有効な治療法とされるが,そのリハビリテーション(リハ)に関する報告は少ない.PPFEについて,肺移植前後の経過をその他間質性肺炎(IP)と比較し,特徴を明らかにした.

【方法】対象は,2015年1月~2021年12月に当院で肺移植を行った成人患者より,退院を経ず死亡の転帰となった者,リハ評価を行えなかった者を除いた83名から,PPFE 11名(うち,特発性7名),IP 33名を抽出した.移植登録時,移植直前,移植後の初回退院時,移植6ヶ月後および1年後の経過を,PPFEとIPの2群間で比較した.

【結果】PPFE群はIP群に比して女性の割合が高く(63.6vs24.2%),移植後抜管までに日数を要し(中央値7vs3日),気管切開率が高かった(54.5vs15.2%).全期間を通して低BMIであったが,術後の筋力や動作能力に有意差がなかった.6分間歩行距離は全期間で有意差がなかったが,修正MRC息切れスケールは術後に高値を示す傾向にあり,長崎大学呼吸器ADL評価表における動作速度や息切れの点数は移植1年後で低かった.

【考察】PPFEでは低BMI状態は移植後も続くが,筋力や耐久性は回復する.呼吸器管理が長引くことによる合併症と,長期化する息切れ対策が重要である.

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