2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s342_1
【背景と目的】生体肺移植(LDLLT)は本邦を中心に行われており,生命予後は脳死肺移植(CLT)とほぼ同等とされるが,健康関連QoL(HRQoL)に関しては定かでは無い.移植後5年までのHRQoLについて検討を行った.
【方法】当院の肺移植患者を対象とし,術前,術後3ヶ月,6ヶ月,1年,以後1年毎に5年までのSF-36を調査し,3コンポーネント・サマリースコア(PCS, MCS, RCS)を算出した.CLTは術前評価の欠測値が多く,LDLLTとの術前比較にはmMRCを用いた.術後経過の比較では,術前mMRC,QoL評価時の慢性移植肺機能不全合併の有無を共変量とし,線形混合モデルを用いて解析した.なお,有意水準は5%とした.
【結果】LDLLT68例,CLT148例が解析対象となり,全体では中央値4.4年まで経過観察され,5年後観察を完遂したのは94例(44%)だった.術前のmMRCはLDLLTで有意に高値であった(p<0.001).PCSは術後3ヶ月でLDLLT36点 vs. CLT40点,術後5年で41点 vs. 39点と同等になった.MCSは術前からLDLLT56点と高値であり,術後はLDLLT,CLT共に50点を超えて推移した.RCSは術前LDLLT27点と低値であり,術後3ヶ月においても低値が持続したが,術後5年ではCLT46点に対し,LDLLTは50点を超えた.線形混合モデルによる評価では,LDLLTとCLTの経過に有意な差は認められなかった.
【結論】LDLLT患者はCLTと比較して,術前の呼吸器症状はより重度であったが,少なくとも術後のHRQoLは同等,もしくは一部でLDLLTが上回ると考えられた.