移植
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マウス気管移植モデルにおける上皮下血管へのヘモグロビン小胞体による早期再潅流
小野沢 博登河野 光智酒井 宏水岩﨑 正之
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s343_2

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抄録

【緒言】

ヘモグロビン小胞体(Hemoglobin vesicle; HbV)は、期限切れ輸血用 ヒト赤血球から抽出した濃縮ヘモグロビンをリポソーム化した人工酸素運搬体である.HbVは粒子径が250nmと小さいため毛細血管を効率的に灌流できる可能性がある。

【目的】気管移植モデルにおいて、HbVによる毛細血管の再灌流を評価しRBCによる再灌流と比較すること。

【実験】

マウス気管並走移植モデルでHbVを投与し,移植された気管の上皮下毛細血管(Subepithelial capillaries; SEC)の血流を観察した。モデルにはC57BL6J,7週齢を使用した。まず全身麻酔下にドナーの輪状軟骨下から分岐部までの気管を摘出し生食に浸漬して4℃で冷保存する。その後レシピエントの気管にドナー気管を2カ所で端側吻合を行う。移植後に尾静脈からHbV溶液(Hb濃度10g/dL)0.3mlを投与し覚醒させる.所定の時間(1、4、6、8時間)で犠牲死させ気管を摘出し組織学的に評価を行った。

【結果と考察】

移植気管のSECには赤血球は認めなかったがHbV投与4時間後に、電子顕微鏡でHbV粒子が観察された。その数は6時間で最大となり8時間後まで観察された。

赤血球より小さいHbVは移植後、赤血球より早く移植片の毛細血管に再灌流し、移植組織の酸素化に寄与する可能性が示唆された。

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