移植
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マウス同所性肝移植モデルにおいて、ドナーの術前運動は肝移植虚血再灌流障害を軽減する
中野 亮介Yadani HamzaGeller David大段 秀樹
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s343_3

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抄録

【緒言】我々は,これまでにexercise training (ExT)が肝臓における虚血再灌流傷害(IRI)を改善し、また腫瘍増殖に抑制的に働くことを報告してきた。しかし、肝移植IRIにおけるドナーのExTの役割は不明である。

【目的】マウス同所性肝移植モデルを用いて、ドナーのExTが肝移植IRIに与える影響を解明することである。

【方法】C57BL / 6マウス(CD45.2)をExTまたはsedentary(Sed)グループに分けた。最終ExTの2日後に肝臓グラフトを摘出した。1時間の冷保存後,コンジェニックマウス(CD45.1)をレシピエントとするマウス同所性肝移植を施行した。再灌流6時間後に血液サンプル、および肝臓グラフトを採取した。血液検査、病理組織学的検査、フローサイトメトリー、qPCR法等を用いて、2グループ間(ExT vs Sed)の比較検討を行った。

【成績】ExTグループは、再灌流6時間後の血清ALT / AST / LDH値が、Sedグループに比べ有意に低値であった(ExT vs Sed; p <0.05)。肝臓グラフトの病理組織学検査では、Sedグループと比較して、ExTグループで肝細胞壊死が減少していた。このExTグループにおける肝保護効果は、肝臓内へのレシピエント由来の好中球浸潤および好中球細胞外トラップ(NET)形成の減少を伴う、肝内炎症性サイトカインカスケードの抑制が関与していることが示唆された。

【結論】ドナーのExTは、肝移植虚血再灌流障害に保護的に働いていることが示唆された。このことは、肝移植成績のさらなる向上のために、ドナーのExTが新たな治療介入手段となる可能性がある。

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