2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s401_1
【緒言】近年、免疫抑制剤や術前脱感作療法の進歩により、免疫学的ハイリスク症例の腎移植が可能となってきている一方で、移植後の感染症管理は大きな課題のひとつである。サイトメガロウイルス(CMV)感染症は腎移植後に問題となる重要な感染症のひとつであり、移植腎の予後に影響することが知られている。そこで我々は、当科で腎移植を施行した症例のCMV感染の状況について検討したので報告する。【結果】2019年から2021年の間に当科で腎移植を施行した395症例について検討した。51症例(12.9%)で移植後CMV感染を発症した。CMV感染発症群と非発症群の間には年齢や性別などの患者背景や、血液型やドナー特異抗体などの免疫学的背景では明らかな有意差を認めなかった。術前脱感作療法としてIVIgを施行した症例はCMV感染発症群で15.7%、非発症群で7.0%(P=0.038)であり、CMV発症群で有意に術前IVIgを投与されている症例が多いことが示された。一方で、その他の脱感作療法では明らかな有意差を認めなかった。【考察】今回の検討では、術前脱感作療法でIVIgを使用することによりCMV感染のリスクを増大させる可能性があることが示唆された。近年IVIgが保険適応となったが、今後の症例のさらなる蓄積が望まれる。また、CMV感染予防について適切な予測因子が明らかとなれば、移植腎の予後改善が期待できると考える。