移植
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腎臓移植後患者における経時的な心機能変化
村上 由香加藤 倫子井上 高光頓所 展
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s406_2

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抄録

【背景】腎臓移植は周術期心血管イベント発生リスクは中等度とされており、術前の心機能評価は広く一般的に行われている。一方で、腎移植後に心機能がどの様に変化するかを経時的に評価した報告は少ない。また、CNI(特にTacrolimus)による心臓拡張機能・心筋肥大・心筋繊維化は0.6〜1%に生じるとされるが、血中濃度と拡張機能について経時的に観察した報告もいまだない。

【方向】当院においては、腎移植後の患者に対し、半年毎ないし1年毎に定期的な心機能評価を心臓超音波検査を用いて行っている。7名を対象に移植前(Pre)および移植後に経時的に行った3回の心エコー(P1, P2, P3)をもとに、心エコー指標の変化を組織ドプラ指標、ストレイン解析を含めて検討した。移植前を基準値とし術後の経時的変化を実測値および変化率にて比較した。

【結果】左室収縮機能はPre, P1, P2, P3で有意な変化を認めなかった。右室収縮機能指標TAPSEは術後有意に改善し、以後の経時的な変化は認められなかった(Pre vs. P1, 14.1 vs. 18.3, p<0.03)。左室拡張機能指標であるE/e’は術後および以後も経時的に改善傾向があった(Pre vs. P1 vs. P3, 16.2 vs. 14.3 vs. 12.2, both p<0.06)。Global longitudinal strainは術後に経時的な改善が認めれた(P2 vs. P3, -16.2 vs. -19.2, p<0.05)。血中濃度と拡張機能については有意な相関は認めれなかった。

【考察】腎臓移植後は術前に認められた心拡張機能障害が経時的に改善している可能性が示唆された。運動耐容能の改善にもつながり、患者生活指導においても有用な知見となる可能性がある。

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