移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
後世へ伝授すべき心臓移植手技:すべては基礎技術の積み上げである
小野 稔
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s106_2

詳細
抄録

わが国では脳死臓器提供が限られているために、成人心臓移植待機期間は5年を超える長期となっている。そのため、植込み型補助人工心臓(iVAD)によるサポートが95%以上で必要となるという国際的には特異な状況にある。本セッションでは、東京大学における200例を超える心臓移植の経験を通して、スムーズに移植を進めるためにはどのような留意点が必要なのかの要点をお伝えしたいと思う。第1は、iVAD装着手術において来るべき心臓移植をいかに容易にするかを念頭においた手術をしておくことである。第2は、広範囲な剥離操作をいかに無駄なく行うかである。第3は、剥離を短時間で完了するためにiVAD本体やドライブラインをうまく利用して大きな心臓を手前に引き出してくることである。第4は、レシピエント心臓切離線を正確に読み解いて吻合を行いやすいように切離を行うことである。第5は、最初の左房後壁吻合においてきれいな内膜接合面を作ることである。第6に、レシピエントとドナーの異なるサイズの吻合をピッチとバイトの調整で辻褄をうまく合わせることである。この6つの要点を迷うことなく流れるように行えば、出血の少ない迅速な心臓移植手術が誰にでも可能である。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top