移植
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行動科学を基盤とした科学的根拠に基づく臓器移植啓発モデルの構築
瓜生原 葉子
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s111_1

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抄録

 本研究班では、臓器提供数の増加を目指し、その障壁となっている行動課題をシステム思考の視座で特定し、その解決のための「行動変容」促進因子と方策を明らかにすることを目的としている。具体的には、1)地域の啓発に必要な資源の網羅的調査と必要資源の明確化、2) 地域啓発プロセスの開発とマニュアル作成、3) 地域啓発の共創環境整備、4) 移植、および提供に携わる医療者への啓発課題の抽出と方策の明確化を目標としている。そのうち、特に2)に着目して報告する。

 まず、既導出の臓器提供意思表示行動に関する「行動変容促進メカニズムモデル」を適用し、各地域の意思表示行動の促進因子を明らかにする定量調査を実施した。14,562名の回答の分析結果から、関心有り率、意思表示率といった評価指標ではなく、行動変容ステージを指標とする方が適切であることが示唆された。また、各地域のメカニズム図を描き、焦点をあてるべき層を明確にし、その促進因子を明確にすることの重要性も示された。次に、2015年から2018年まで京都で実施した啓発活動について、ソーシャルマーケティングのプロセスに則って整理した。また、行動変容の実効性を高めるための8つの必須要素を明示した。これらに基づき、『科学的根拠に基づく啓発活動マニュアル』のドラフトを作成した。今後、本マニュアルを検証・精緻化することで、各地域の啓発施策の立案に貢献したい。

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