移植
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心臓移植増加のための心停止ドナーからの心臓移植の実現に向けて:海外の現状と日本における課題
小谷 恭弘廣田 真規黒子 洋介小野 稔笠原 真悟
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s113_1

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抄録

日本における心臓移植待機者数は約900人と増加の一途を辿っており、移植待機期間は平均4年以上と諸外国に比べ長く、臓器提供増加が喫緊の課題である。諸外国ではドナープール増加のため心停止ドナー(DCD)からの心臓移植を行っている。今回、海外における心停止ドナー心臓移植の現状を調査し、今後国内において実施するための課題を検討した。脳死と異なり心停止の定義は難しく各国で様々な解釈がされている。米国では統一死亡判定法で”不可逆的な呼吸循環機能停止あるいは不可逆的な脳機能停止”として定められているが、1981年制定のものであり現代の解釈に応じて改訂予定となっている。一方、わが国においては死を定義した法律はない。もう一つの問題は、生命維持治療の停止(WLST)に関するものである。わが国ではこれを禁止とした法律はないが、倫理的な問題から臓器提供を目的としたWLSTには慎重な検討が必要である。心臓の摘出方法については体外での再灌流と、体内での再灌流があり、国や施設によってもその選択は異なる。いずれの方法も一長一短があり、心機能維持の目的のみならず倫理面からのアプローチも必要である。諸外国で行われているDCD心臓移植は5年生存率でも脳死心臓移植と遜色ないとの報告がされており、またドナープールを3%から最大200%まで増加している国もあり、今後わが国においても前述の問題点を克服するための議論や指針の策定が必要となると考えられた。

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