移植
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乳児急性肝不全における生体肝移植ドナーの精神的・身体的サポートの現状と課題
中里 弥生上遠野 雅美大野 珠愛福田 晃也阪本 靖介笠原 群生
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s117_2

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抄録

【目的】急速に発症・進行する予後不良な乳児急性肝不全において、家族は病態・肝移植の必要性、ドナー選択など短期間での理解と判断を求められる。母親がドナーになる場合には産褥期・授乳期の身体的問題があり更なるサポートを要することから、当センターの取り組みの現状と課題について検討した。【対象・方法】2023年4月までに乳児期に生体肝移植を施行した342例中、母親がドナーとなった乳児急性肝不全例は32例であった。家族構成・産褥・授乳の問題、遺伝子相談・術後の出産の有無などについて検討した。【結果】平均観察期間は8.2年(再移植7例;23%、死亡5例;17%)。50%で患児同胞がおり、患児が第一子は46%、産褥・授乳の対応を助産師の依頼を48%、遺伝子相談・次子出産が31%であった。術後の月経開始・不順、母乳ケア、婦人科受診等の相談対応が必要であった。更にレシピエント退院後は母親ひとりでの育児が主体であり、育児に関する身近な相談窓口も少なく、電話連絡での体調・育児相談への対応が求められた。死亡例のドナー外来受診率は低く、グリーフケアが実施できていないのが現状である。【課題】乳児急性肝不全に対して母親をドナーとして生体肝移植を行う場合、 1)術前の病態・移植医療に対する不安の軽減、2)産褥・授乳に対する介入、3)神経学的後遺症をもった家族への育児支援、4)死亡例のドナーに対するグリーフケアなどが課題である。

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