水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
研究ノート
北海道幌延地域沿岸部の深層地下水における微生物分布の特徴
杉山 歩井原 哲夫辻村 真貴永翁 一代加藤 憲二丸井 敦尚
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 32 巻 5 号 p. 245-254

詳細
抄録

 浅層地下水における微生物群集構成に,環境因子が影響を及ぼすことを示唆する報告はあるが,深層地下水における環境微生物の動態に関する理解は十分とはいえない.本研究では,北海道幌延地域沿岸部のボーリング孔から採取された深度700 mを超える深層地下水を対象として,微生物数,群集構造の特徴を把握することを目的とし,無機溶存成分等の水文パラメータとあわせて微生物の空間分布特性を検討した.深度715 mにおける微生物数は2.68 (±0.03) × 103 cells/mL,FISH法によるBacteriaの検出率が14.9 %であった.しかし,より深部の943 mでは微生物数が1.87 (±0.09) × 105 cells/mL,Bacteriaの検出率が48.8 %と増加した.嫌気,好アルカリ,好塩環境に生息する多様な分類群の微生物が検出され,海水が混入した環境の可能性が示された.また,遺伝子解析からメタン生成菌の存在が示唆された.微生物活動によりメタン等が発生することを考慮すると地下環境における微生物分布,活性評価が重要であるものと考えられる.

著者関連情報
© 2019 Japan Society of Hydrology and Water Resources
前の記事 次の記事
feedback
Top