移植
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CMV感染の予防と治療
後藤 憲彦二村 健太島本 侑樹西沢 慶太郎小玉 寛健姫野 智紀長谷川 雄基岡田 学平光 高久鳴海 俊治渡井 至彦
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s128_1

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抄録

サイトメガロウイルス(CMV)は移植された臓器を感染目標とするのが一般的であるが、腎移植だけは例外で、移植腎ではなく微熱や倦怠感のようなCMV症候群がメインとなる。CMV抗体を獲得していない腎移植候補者の増加から、CMVミスマッチ(ドナー抗体陽性/レシピエント抗体陰性)間での腎移植も増えている。周術期のCMV感染で問題となるのはドナー腎からの初感染である。当院では、ABO不適合、HLA不適合腎移植術後3ヵ月と、ATGにて拒絶反応治療後3ヵ月に対して、バルガンシクロビル(VGCV)を3ヶ月予防投与している。CMV症候群は、血中CMV核酸定量検査(CMV PCR)による早期抗ウイルス薬開始でほとんどが管理可能である。CMV PCR検出感度以上でVGCV開始し、PCR 100IU/ml未満で終了する。薬剤性の白血球減少には注意が必要である。腎移植後CMV感染症は、網膜や肺を巻き込むことがほとんどないが、消化管へのCMV初感染は、気づくのが遅れることがある。上皮ではなく粘膜下層へ感染が及ぶことが多いため、血管を巻き込んで消化管出血や腸穿孔を引き起こす。組織内のCMV感染を証明することで確定診断され、血中CMV核酸定量検査は通常陰性である。ガンシクロビル(GCV)を原則2週間使用する。CMV抗体陽性レシピエントで周術期に組織侵襲性CMV感染症に至ることは稀である。CMV PCR 3000IU/ml以上でVGCV開始し、PCR 1000IU/ml未満で終了する。免疫抑制薬の調節も重要である。当院での経験を紹介する。

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