移植
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長期ECMO管理後の肺移植
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s135_1

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抄録

はじめに:肺移植待機中に状態悪化した患者に対して、肺移植へのつなぎとして体外式膜型人工肺(ECMO)が適応となることがある。脳死肺移植の平均待機期間が900日と長く、待機中に状態が悪化しても肺の斡旋が優先されることの無い日本において、肺移植へのつなぎとしてECMOを装着した場合は長期ECMOが予想され、ECMO管理中の血小板・凝固異常や感染が問題となる。109日間に及ぶ長期veno-arterial ECMO管理後の肺移植症例を紹介する。症例:40歳、男性、原疾患は特発性間質性肺炎、肺高血圧症を合併。病状進行し待機日数288日の時点でVA ECMO装着となり、他院ICUに入院となった。ECMO管理中、繰り返す血流感染に対して長期の抗生剤使用を要し、二剤耐性緑膿菌保菌状態となった。ECMO下に立位保持可能なADLは維持された。ドナーコールあり、ECMO装着109日目に脳死両肺移植に至った。長期ECMO装着状態のため出血傾向あり止血に難渋、手術時間15時間、出血量21000mlに及んだ。移植肺機能は良好で手術室でECMO離脱し集中治療室に入室した。術前に喀痰から検出した二剤耐性緑膿菌は術後1週間で多剤耐性菌となり抗生剤選択に工夫を要した。理学療法を積極的に行い術後半年で独歩自宅退院となった。考察:長期ECMO管理に伴う凝固異常、保有菌の耐性化が手術操作・周術期管理に影響した。ECMO下にても立位可能なADLが保たれ、これにより肺移植後独歩退院が可能であったと考える。

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