移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
特発性肺動脈性肺高血圧症に対する脳死両肺移植後の経過に影響を与えたcardiac lipomatous hypertrophy
田中 里奈木下 秀之河野 幹寛今村 由人高橋 守西川 滋人豊 洋次郎大角 明宏濱路 政嗣中島 大輔伊達 洋至
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s138_2

詳細
抄録

症例は46歳女性。35歳時に、特発性肺動脈性肺高血圧症と診断され、診断から8か月後にエポプロステノールの持続静注が開始された。6年後、脳死肺移植の待機登録となった。エポプロステノールは110 ng/kg/min程度で移植待機をしていた。登録から6年後に、脳死両肺移植を行った。ECMOサポート下に両肺移植を行った。術後2日目にECMO抜去に至ったが、術後3日目にうっ血性心不全の進行あり、ECMOを再導入した。仮閉胸の状態であったため、上行大動脈送血、右房脱血を予定した。右房から上大静脈にカニュレーションを試みた際に、上大静脈にスムーズにカニューレがすすまず、右房の損傷があり、人工心肺下に修復を行い、脱血管は右大腿静脈から挿入した。術後9日目の経食道心エコーにて中等度の僧帽弁逆流症が指摘され、その後も改善がなかった。また、術後3日目のECMO導入後より出血傾向が著明になり、再開胸・止血・血腫除去を繰り返した。このような経過で、移植肺はconsolidationが増悪し回復が望めない状態になり、術後約2か月後に死亡した。病理解剖は施行できなかったが、経過中のCTや心エコーを見返すと、画像的にLipomatous hypertrophy of the atrial septumの特徴を示し、心房中隔以外にも房室間溝や心臓周囲脂肪の増生と考えられる所見を認めた。これが、右心系の拡大が解除された後の上大静脈へのカニュレーション困難や、移植後僧帽弁逆流の誘因と考えられた。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top