移植
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膵移植のNightmare case~高度動脈硬化症例~
平光 高久姫野 智紀長谷川 雄基二村 健太岡田 学後藤 憲彦一森 敏弘渡井 至彦鳴海 俊治
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s139_1

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抄録

はじめに膵腎同時移植では長期間の1型糖尿病、その後の末期腎不全により高度動脈硬化症例を認める。高度動脈硬化症例では術後合併症のリスクが高い。当院で経験した高度動脈硬化を認め、術後に数々の合併症を経験した症例につき供覧する。症例 40歳代女性。透析歴9年、1型糖尿病歴28年であった。術前CTで腹部大動脈より末梢の動脈硬化が高度であった。膵移植では、高度動脈硬化のため、右総腸骨、外腸骨動脈はクランプ、吻合は不可能であった。そのため、グラフトの腹腔動脈、上腸間膜動脈パッチを切離して、ドナー腸骨動脈でYグラフトとして1本化した後、右内腸骨動脈と端々吻合した。腎移植動脈は左外腸骨動脈に端側にて吻合としたが、吻合可能部位が左外腸骨動脈の背側であり、移植腎動脈を一部切離してinterpositionとして左外腸骨動脈に端側吻合した後、interpositionした動脈と移植腎動脈を端々吻合した。術後9日目に移植膵周囲の大量の膿瘍を認め、開創して2ヶ月間洗浄ドレナージを行ったのち閉創し抗生剤、抗真菌剤治療を継続した。さらに術後3ヶ月後、腹痛、発熱を認めCTで胃噴門部周囲のfree airを認めた。緊急胃全摘術、脾摘術を行った。胃噴門部背側の壊死穿孔を認めた。その後、食道小腸吻合部のリーク、左膿胸を認め、3ヶ月間ドレナージの末リーク部の閉鎖を認めた。最終的に6ヶ月間の入院の末病状は安定して転院となった。

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