2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s139_2
肝移植手術では、再肝移植症例、被嚢性腹膜硬化症、巨大嚢胞肝等、術中操作が極めて難しい状況に遭遇する場合がある。麻酔科のきめ細やかな術中管理と、心臓・呼吸器・泌尿器等の外科系診療科のサポートのおかげで何とか乗り越えられた症例を多く経験している。術後管理では、肝動脈閉塞や腸管穿孔等の合併症にて再開腹手術を時に経験する。ABO不適合生体肝移植術後では難治性抗体関連型拒絶を経験した。ステロイドパルス、大量ガンマグロブリン療法、血漿交換等を行ったが改善せず、さらにボルテゾミブ、ダラツムマブを使用したが、治療抵抗性であった。呼吸管理では、肝肺症候群による高度肺内シャント症例を経験した。術後呼吸状態の悪化を認め、術後ECMOを含めたあらゆる集中治療を行った。脳死肝移植では、分割肝移植で術後早期Primary non functionを経験した。ハイリスク症例こそ術前からの綿密なプランニングと周術期の多職種チームとしての協力が欠かせない。また、症例毎に詳細に振り返りを行い、経験を次の症例に生かせる取り組みを続けている。本発表では、術前、術中、および術後管理に難渋した症例の提示を行い、我々の経験を共有させていただく。