移植
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日本版心臓移植allocation systemに対する提言
波多野 将
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s153_2

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抄録

 心臓移植と植込型補助人工心臓(VAD)治療の役割が明確に分けられつつある海外と異なり、わが国において心臓移植を受ける患者のほぼすべてが植込型VADを装着して移植を待機しているのが現状である。このため、肥大型心筋症,拘束型心筋症,不整脈原性右室心筋症など植込型VADに適さない患者をいかに適切に移植までブリッジさせるかを考える必要がある。また、拡張型心筋症(DCM)においても、遺伝子変異の種類などにより予後が異なることが明らかとなってきている。ラミン関連心筋症は遺伝子変異のない、もしくは他の遺伝子変異を有するDCMよりも治療抵抗性で予後不良であることに加え、植込型VAD装着後も右心不全を呈しやすく、VAD装着後も予後不良であることが分かってきた。さらに、VAD装着後の移植待機期間が5年以上と長期にわたる現状においては、VAD装着中も刻々と状態が変化することにも注意が必要である。自施設の検討では、VAD装着遠隔期の腎機能低下(LDRF)は、大動脈閉鎖不全症,遅発性右心不全,心室性不整脈と関連があり、LDRFを生じた患者においてはその後の予後が不良となる。心臓移植登録患者における待機中死亡は20%を超えているのが現状であるが、この死亡率を減少させるため、上述したような患者の待機期間を短縮させるような「日本版心臓移植allocation system」について提言したい。

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