2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s154_1
近年の心臓移植レシピエント候補の増加とわが国の深刻なドナー不足により、心臓移植待機期間は1,700日を超えるに至った。移植前状態のほぼ100%は非拍動型植込型VAD装着状態にある。J-MACSデータによれば、術後1年のVAD関連合併症として、感染(36%)、神経機能障害(24%)、大量出血(21%)、右心不全(7%)、除細動を要する不整脈(8%)があり、3年生存は85%とされる。現在当院では、心臓移植適応承認84名中12名(14%)に心臓移植を施行しえたが、待機中に16名(19%)が死亡しており、原因として多臓器不全、脳血管障害、感染が多い。また、緊急入院では、心室頻拍や心室細動等の不整脈、右室不全、ドライブライン断線、感染が多い。待機中のこれらの状態を考慮した、わが国独自のスコアリングシステムの開発、allocation systemが望まれる。不整脈や右心不全にて繰り返し入退院を余儀なくされる症例、BiVADサポート症例、後遺症のない待機中脳血管障害症例、繰り返す溶血・血栓等の症例は、待機中予後の改善の観点から、優先度を再考してもよいかもしれない。しかしながら現在、これらの合併症の程度やそれに伴うStatusの変更においては客観的な検証はされておらず、各要素を組み込む際には客観的な評価システムの構築が必要となろう。当院における心臓移植待機の現状を報告し、allocation systemの現状の課題と将来的なあり方、改定への進め方を議論したい。