2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s173_1
【背景】臓器移植後は、免疫抑制剤による治療の継続が必要であるが、長期経過症例では、患者側、医療者側の様々な要因により、治療・管理が不十分となり、拒絶反応などの有害事象につながることがある。特に小児期の移植後では、思春期・青年期におけるアドヒアランスの低下が要因として存在する。【目的・方法】1991年から2012年の18歳未満生体肝移植症例86例のうち、1年以内に死亡した10例を除く75例について、後方視的に、医学的治療・管理の不十分さとその要因、それによって生じた有害事象に関するデータを収集した。【結果】服薬、通院のノンアドヒアランス(NAD)を認めた症例は13例(17.3%)であった。NAD群13例とアドヒアランス(AD)群59例の比較では、DSA陽性率はNAD群で66.7%、AD群で53.8%、NAD群で高かったが、有意差は認めなかった。飲酒が判明した症例はNAD群で3例(23.1%)、AD群で0例であり、NAD群で有意に多かった。免疫抑制剤中止プロトコールにより免疫抑制剤フリーとなった症例が8例存在し、その後プロトコールを中止し全例再開したが(ISF群)、免疫抑制剤継続群(IS群)67例と比較し、ノンアドヒアランス症例となった比率がISF群50.0%、IS群13.4%であり、ISF群で高く、有意な差を認めた。【結語】NAD症例では、DSA陽性率が高く、また、その他の問題行動も多い傾向にある。医療管理の継続的介入が、アドヒアランスを改善する可能性があり、対策する必要がある。