移植
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腎移植におけるリキッドバイオプシーの可能性
岩本 整今野 理沖原 正章赤司 勲木原 優杉本 昌弘
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s187_1

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抄録

リキッドバイオプシーとは、低侵襲または非侵襲的に血液や体液を採取して得たタンパク、核酸などの検体を解析する技術である。がん領域において,疾患の早期発見,治療効果の予見が期待され、すでに臨床応用されている。非侵襲的に繰り返し行える移植腎機能障害の診断方法の確立は臨床からの強いニーズが存在する。近年、分子の網羅的測定技術が進み生体試料から多数の分子を同時に測定し、新しい機能を持った分子探索や、新しい疾患分子マーカーの探索の研究が一般化してきた。ゲノム、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの測定・解析が確立してきている。網羅的測定のターゲットバイオマーカーとして、遺伝子DNA、転写物mRNA、Extracellular vesicles(エクソソーム)、タンパク質、代謝産物などがある。われわれはコントロール群を腎移植ドナー、移植腎機能安定群とし、対象群を移植腎機能障害群とした、血液、尿、唾液を用いたメタボローム解析よる研究で3-indoxyl sulfateなどが急性拒絶反応のポテンシャルbiomarkerとなる可能性を報告した。リキッドバイオプシーは特異性や、検査技術の標準化など課題も多いが、血液、尿などの体液を用いることで患者の負担が少ない、対象バイオマーカーの経時的変化を追うことにより治療経過のモニタリングができるなど有用性も多く研究の発展が期待される分野である。

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