移植
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移植腎病理組織から移植腎機能を推定する
村田 雅樹田崎 正行齋藤 和英池田 正博石川 晶子今井 直史伊藤 由美成田 一衛冨田 善彦
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s187_2

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抄録

移植腎生検は移植腎で生じうる様々な変化をリアルタイムに直接評価することが可能で、日常診療において欠かすことのできない検査である。その目的によって移植前生検(0hr biopsy)、プロトコル生検、エピソード生検に大別され、腎生検の果たす役割は少しずつ異なる。

移植前生検はドナーがもつ潜在的な病変の確認や移植後に行われる腎生検のベースラインの指標として重要であるが、本生検の病理学的所見と、ドナー因子や移植腎予後との関連を検討した報告も複数なされている。我々の施設においても心停止下献腎移植67症例を後方視的に検討し、細動脈硝子化(Banff ah score)の程度が移植腎機能の推移と相関することを確認し、小動脈で生じる早期の動脈硬化性変化を捉えることの重要性を示した。

深刻な臓器不足が世界的に問題となっているなか、献腎移植の啓蒙や普及、生体腎移植においてはマージナルドナーの増加など、条件が必ずしも良好でないグラフトが増えていくことが予想される。貴重な臓器を有効に利用するためにも、移植腎の予後を予測し症例ごとにマネジメントしていくことが必要となる。ここでは、移植腎病理組織からの移植腎予後予測について過去の報告を検討するとともに、日常診療にどのように応用していくべきか私見も含めて解説する。

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