移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
恒温機械灌流は温阻血後の腎臓におけるATP生成と移植腎機能を改善しこれらは薬剤によるミトコンドリアの保護によりさらに増強される
川村 正隆
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s236_2

詳細
抄録

【目的】腎臓の恒温機械灌流(NEVKP)は、新しい保存技術である。我々は、生体外機械灌流がミトコンドリアのエネルギーレベルを補充し、それによってミトコンドリア機能を回復させ、腎臓移植片の傷害を軽減するという仮説を立てた。ミトコンドリアを標的とした硫化水素供与体であるAP39は、ミトコンドリアの電子輸送を刺激することが示されている。NEVKP中にAP39を投与することで、ミトコンドリア機能を保護し、虚血再灌流障害から腎移植片を保護できるかどうかを検討した。【方法】豚の腎臓を60分間の温阻血後、5時間の静的低温保存(SCS)またはNEVKPによる臓器保存を行った。その後、グラフトを3群に分けた: SCS群、NEVKP群、NEVKP+AP39群。グラフトを自家移植し、3日間のフォローアップを行った。【成績】NEVKPで保存したグラフトは、SCS群と比較して血清クレアチニン値(SrCr)が低下していた。NEVKP+AP39による治療は、NEVKP群と比較してSrCrをさらに低下させた。SCS、NEVKP、NEVKP+AP39を用いて保存したグラフトの細胞懸濁液のATPを測定した。SCS群に比べNEVKP群でATPレベルが上昇し、AP39を投与するとさらにこのレベルは上昇した。【結論】 温阻血後のグラフトにおいて、NEVKPはATP生成と移植片機能を維持する可能性があり、ミトコンドリアを標的とした硫化水素供与剤AP39によりさらに増強された。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top