2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s236_2
【目的】腎臓の恒温機械灌流(NEVKP)は、新しい保存技術である。我々は、生体外機械灌流がミトコンドリアのエネルギーレベルを補充し、それによってミトコンドリア機能を回復させ、腎臓移植片の傷害を軽減するという仮説を立てた。ミトコンドリアを標的とした硫化水素供与体であるAP39は、ミトコンドリアの電子輸送を刺激することが示されている。NEVKP中にAP39を投与することで、ミトコンドリア機能を保護し、虚血再灌流障害から腎移植片を保護できるかどうかを検討した。【方法】豚の腎臓を60分間の温阻血後、5時間の静的低温保存(SCS)またはNEVKPによる臓器保存を行った。その後、グラフトを3群に分けた: SCS群、NEVKP群、NEVKP+AP39群。グラフトを自家移植し、3日間のフォローアップを行った。【成績】NEVKPで保存したグラフトは、SCS群と比較して血清クレアチニン値(SrCr)が低下していた。NEVKP+AP39による治療は、NEVKP群と比較してSrCrをさらに低下させた。SCS、NEVKP、NEVKP+AP39を用いて保存したグラフトの細胞懸濁液のATPを測定した。SCS群に比べNEVKP群でATPレベルが上昇し、AP39を投与するとさらにこのレベルは上昇した。【結論】 温阻血後のグラフトにおいて、NEVKPはATP生成と移植片機能を維持する可能性があり、ミトコンドリアを標的とした硫化水素供与剤AP39によりさらに増強された。