2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s260_2
【背景と目的】亜鉛が欠乏すると、亜鉛酵素の活性が低下し蛋白合成全般が低下する。これにより貧血や味覚障害、下痢、骨粗鬆症などを呈する。今回、低亜鉛血症に対して亜鉛を補充することによる、eGFRやHb、MCV、Fe、TIBC、UIBC、フェリチンの変化を検討した。亜鉛補充群と、亜鉛補充なし群で比較検討した。【対象】当院で腎移植を施行し1年以上経過した症例のうち、亜鉛血中濃度が低く酢酸亜鉛水和物を処方した8例と、亜鉛を計測したのみで経過をみていた45例で比較検討した。処方のあった患者群は処方前後の採血データ、処方のなかった患者群は、亜鉛の採血データと、その後3-6か月での採血を比較検討した。【結果】処方前の2群比較の中では、亜鉛の血中濃度(55.4±6.5 vs 69.3±9.6 p<0.01)とHb(10.6±1.1 vs 12.3±1.6 p=0.004)が有意に低かった。eGFR、MCV、Fe、TIBC、UIBCに有意差は認めなかった。2群の前後比較の中では、eGFRは1.5±3.5 vs -0.8±5.6(p=0.16)、Hbは0.13±1.6 vs 0.23±1.1(p=0.877)と有意差はなかった。唯一、UIBCのみ2群の前後比較で有意差があった(31.9±15.1 vs 11.1±45.7 p=0.03)。【結語】当院における腎移植患者の血清亜鉛濃度の変化とその影響を検討した。