抄録
本稿の目的は発展途上国のコミュニティ幼稚園(CPS)の特徴と課題を整理し,カンボジアを事例に,就学前教育の普及に対するCPSの貢献と政策の推移を明らかにすることである。方法として文献研究および全国統計や最小行政区の経年データの分析を行った。CPSは脆弱なコミュニティでの展開,住民参加,低コスト,包括的発達支援という特徴がある一方,財政面の脆弱性,教育の質や持続性の低さという課題を抱えている。カンボジアのCPSは小学校までの距離が遠い農村地域を優先して設置され,特に3~4歳児(より多くの女児)の就園を促してきた。政策の推移からは政府の関与が漸進的に高まる様子が確認され,CPSの課題に対処する戦略が明らかとなった。