移植
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肝移植におけるDamage control手術
原 貴信曽山 明彦松島 肇今村 一歩山下 万平福本 将之右田 一成川口 雄太足立 智彦江口 晋
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s278_2

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抄録

【はじめに】

肝移植(LT)レシピエントは術前からの凝固障害、術中の大量出血、大量輸血、虚血再灌流により、さらに凝固障害、アシドーシス、低体温が進行する悪循環に陥ることがある。また、大量出血・輸血後は、腹部コンパートメント症候群による肝血流低下、心拍出量低下、換気不全の懸念がある。Damage control(DC)戦略は重症外傷において広く受け入れられ、近年は外傷以外の急性期手術でも有用性が報告されている。当科においてLTに対しDCを要した症例を検討した。

【対象と方法】

対象は2009年から2022年までのLT250例。DCの適応は、外科と麻酔科が凝固障害、アシドーシス、低体温、輸血量、血管作動薬の必要性に基づき決定した。

【結果】

DC群16例は通常群と比較しMELD scoreが高く、腹部手術歴が多く、術前ICU管理症例が多かった。術中因子では冷阻血時間が長く、出血量、輸血量とも多くなっていた。DC決断時、凝固異常を81%、アシドーシス(pH <7.3)を 38%、低体温(< 36℃)を31%、NA >0.1γ投与を75%に認めたが、ICU入室12時間後には凝固異常31%、アシドーシス6%、低体温6%、NA >0.1γ19%と改善。75%が48時間以内に閉腹可能だった。DC群の術後脈管合併症の頻度は通常群と同等で、1年生存率は67%であった。

【結語】

DCは術中の状態悪化を最小限に止め、ICUで患者の全身状態が安定した後に再手術を行うことができるため、困難なLT症例の管理に有用と考える。

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