2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s278_3
【緒言】進行性家族性肝内胆汁鬱滞症1型(PFIC1)は、胆汁酸代謝に関わるFIC1蛋白異常により乳児期から胆汁鬱滞を来たし、肝不全へと進行する。FIC1は肝臓の他、小腸、膵臓等に発現し、様々な肝外症状を伴うため、肝移植のみでは完治しない場合がある。PFIC1に対し肝・小腸移植を行ったが、多くの困難を経験した症例を共有する。【症例】8歳女児。生後6ヶ月にPFIC1と診断。1歳9ヶ月に胆嚢外瘻造設を行ったが、合併症のため短腸症候群となった。TPN依存となり、胆汁鬱滞と成長障害が進行し、8歳時にまず脳死小腸移植を実施。門脈圧亢進症のためSMV-IVC吻合となった。術後門脈血流は乏しく、腸穿孔を経て、肝・腎不全が進行し、術後1ヶ月で生体肝移植を実施。その後も体液管理、経腸栄養確立に苦慮し、早期より脂肪肝を認め、また、膵炎をくり返した。小腸移植1年2ヶ月後に小腸グラフト拒絶を認め、ステロイドパルス、ATGで改善したが、膵炎や浮腫増悪を認めた。その後膵仮性動脈瘤破裂を認め、コイル塞栓術を施行。1年5ヶ月時膵炎、膵出血を認め、内視鏡下乳頭切開、膵管ステント留置を実施。腎不全、肺水腫に至り透析導入。1年7ヶ月時膵仮性嚢胞感染を認め、ドレナージ術施行。敗血症、再度膵出血を認め多臓器不全進行し、小腸移植後1年9ヶ月で死亡した。【結語】PFIC1は肝・小腸移植を含め、多臓器移植の適応も考慮され得る。