移植
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脳死肝移植におけるグラフト不全の術後早期予測因子の検討
田中 真之長谷川 康尾原 秀明篠田 昌宏北郷 実八木 洋阿部 雄太松原 健太郎山田 洋平堀 周太郎浜野 郁美藤野 明浩北川 雄光
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s325_3

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抄録

【背景】脳死肝移植ドナー選択は術後グラフト不全に影響するため,脳死肝移植ドナー不足が深刻であるものの,ドナー選択を慎重にならざるを得ない.術前術中因子から得られたデータをもとに1年グラフト不全のリスクモデル(JRI)が報告された.そこで本研究では,当科の脳死肝移植症例によるJRIの評価および1年グラフト不全のリスクとなる術後因子について検討した.【方法】2013年4月から2023年1月までに当施設で施行した脳死肝移植症例45例を対象とした.グラフト不全を再肝移植またはレシピエント死亡と定義し,JRIを解析した.続いて,術後3,7,14日目の血清から得られた生化学検査結果からグラフト不全の予測因子を検討した.【結果】レシピエントの年齢中央値は41歳(17-57歳),19例(42%)が女性であった.観察期間中央値48ヶ月における1/2/5年レシピエント生存率は93/89/89%,1年グラフト不全を3例(6.7%)に認め,再肝移植症例はなく,また,JRIと相関はなかった(P=0.525).1年グラフト不全の予測因子における単変量解析にて術後14日目のT-Bil (P=0.034),Cre (P=0.026), ALT (P=0.049)に有意差を認めたものの,多変量解析にて独立したリスク因子はなかった.【結語】術後14日目のT-Bil, Cre, ALTが術後早期に得られるグラフト不全の予測因子となり得る傾向を認めた.今後更なる検証が必要であるが,これらの予測因子を利用することでマージナルドナーの層別化が期待される.

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