移植
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当院肺移植待機症例のinactive制度利用とレシピエント移植コーディネーターの役割
杉元 弥生板羽 紗折松田 安史鈴木 寛利星川 康
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s327_2

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抄録

脳死肺移植待機登録後一時的に斡旋対象から除外するinactive 制度がある。当院は2020年に肺移植施設認定を受け、待機登録を行っている中で、inactive制度の検討を要する複数例を経験した。inactive制度の有用性とレシピエント移植コーディネーター (RTC) の役割について検討する。2023年5月現在当院肺移植待機登録16例中、待機中10、死亡3、移植済1、inactive2例であった。inactive 2例は、1.50代女性、間質性肺炎。複数回移植候補となったが受諾せず、状態が安定し原疾患の悪化を認めないため、RTCより提案しinactiveとした。2.50代女性、慢性過敏性肺炎。移植候補となった際COVID-19感染のため受諾せず、感染軽快後も原疾患の悪化なく日常生活が維持できているためinactiveの申し出があった。この他、シロリムス内服中の肺リンパ脈管筋腫症2例、非結核性抗酸菌症治療中の1例で inactiveを検討中である。病状安定、慢性感染症、創傷治癒リスクのある薬剤使用などのためinactive制度を活用することは、肺移植のリスク回避、斡旋業務の効率化のため有用である。一方で、制度の詳細を患者によく説明し、理解を助け不安の解消につとめること、適した時期に移植を供するため病状をよく把握しinactive中止のタイミングを逃さないことなど、RTCの役割が重要である。

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