2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s184_1
【緒言】合併症治療の成否は医療チームの総合力によって左右され、外科的合併症では迅速かつ的確な判断が求められる。いわゆる大病院ではない体制下での腎移植9例のうち手術合併症2例への対応を紹介したい。【症例1】当院1例目の47歳男性。退院前日の腎移植14日後に右鼠径部の疼痛出現、数時間後には著明な陰嚢腫大と尿量減少、CTで移植腎や膀胱周囲に液体貯留なし。陰嚢腫大による圧迫感を軽減するため陰嚢皮膚を減張切開して得られた多量な排液を尿と判断して移植床を再開創した。移植尿管に縫合不全はなく末端に限局した虚血性壊死を認めた。移植尿管は大部分切除し、自己尿管と端々吻合した。【症例2】当院5例目の64歳男性。総腸骨動静脈を剥離した際に動脈壁を損傷、高度石灰化のため複数種類の縫合針が貫通せず、タコシールを用いた圧迫でも出血の勢いは収まらず、ピンホール大の損傷が次第に拡大して修復できず、高度石灰化は中枢まで連続していて人工血管置換も不可能だった。血管結紮用テトロンテープ3本を用いて損傷部位を被覆するようにして結紮したところ完全止血し体内に残した。術後7日目からの漿液腫は1か月間のドレナージで消失した。【結語】中規模民間病院でも迅速かつ的確な判断により手術合併症は対応できる。