2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s230_1
改正法施行より10年が経過し、18歳未満の脳死下臓器提供も緩徐ながら増加しまもなく100例を迎える。制度の課題が指摘されてきたが、厚生労働科学研究費補助金(移植医療基盤整備研究事業)「小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発:荒木班」(平成30年度~令和2年度)では、臓器提供を逡巡させた要因と実現させた要因を解析し「小児版臓器提供ハンドブック」として公表した。律速段階とされる被虐待児の除外について、判断根拠となる資料の検証が必要となり、令和3年度はガイドライン・質疑応答集を調査、同項に関する部分の改正に資する報告を行った。翌令和4年度は日本臓器移植ネットワーク情報公開を受けた研究を開始し、同時に諸外国の体制や被虐待児からの臓器提供について海外有識者インタビューを集約、日本の特殊性について考察した。最終年度は臓器提供成立例と不成立例の特性を抽出、提供の律速段階への対策を考案した。バルセロナ大学DTI (Donation & Transplantation Institute)のTPM(Transplantation Procurement Management)研修を通じて、経験施設を中核とした小児臓器提供連携体制のあり方、脳死下臓器提供に係る人材育成、学校における命の授業等の展開について検討を加えた。