2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s251_2
【背景】日本において生体肝移植の低侵襲ドナー肝切除は外側区域グラフトのみが保険収載されている状況である。一方全世界に目を向けるとグラフト肝切除は腹腔鏡からロボットに移行してきている。当科ではロボット支援下肝切除を、グラフト肝切除も視野に入れて準備を進めている。当科での取り組みを開腹グラフト肝切除と比較して提示する。【対象と方法】当科では2021年9月にロボット肝切除を導入し、2024年4月までに系統的肝切除として5例のロボット支援下左肝切除と3例のロボット支援下右肝切除を施行した。同じ時期に肝移植を6例施行し、左肝グラフトが5例、右肝グラフトが1例であった。手術時間、出血量を比較した。【結果】左肝切除において手術時間はドナー群で395±45.5分、ロボット群で298±40.7分(p=0.15)、出血量はドナー群で173±39ml、ロボット群で387±35ml(p<0.01)であった。右肝切除ではドナー群で365分、ロボット群で444±42分(p=0.44)、出血量はドナー群で650ml、ロボット群で198±97ml (p=0.14)であった。【結論】ロボット支援下手術で肝門部個別処理を行っても安全に手術を施行でき、また、ドナー手術と比較しても遜色ない手術時間、出血量であった。右肝切除の脱転の際に被膜損傷を認め改善の余地がある。技術的には現時点でもロボット支援下ドナー肝切除は導入可能であり、諸外国に遅れをとらないように早急な保険収載が望まれる。