移植
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免疫抑制剤による腎毒性における早期診断マーカーの検討
井上 國彰堀 俊太富澤 満米田 龍生藤本 清秀
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s292_3

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抄録

【目的】これまでCalcineurin inhibitor(CNI)腎症についてEpithelial to mesenchymal transition(EMT)や老化に関連するタンパクに着目してきた。今回, 免疫抑制剤を経口投与したマウスを用いて上記タンパク質の発現を調査し, CNI腎症の早期診断マーカーとしての有用性を検討した。【方法】計42匹のマウスに各種免疫抑制剤を経口投与した。免疫抑制剤は、高用量タクロリムス, 低用量タクロリムス, シクロスポリン, エベロリムス, ミコフェノール酸モフェチル, プレドニゾロンを用い、2ヵ月目と4カ月目にマウスを安楽殺した。腎におけるEMT関連タンパクおよびαKlothoのタンパクについて免疫組織学的染色を用い、治療群毎で比較検討した。【結果】1ヵ月目では高用量タクロリムス群とシクロスポリン群でE-cadherin, TGF-β, αKlothoの発現が増強した。2ヵ月目ではE-cadherinとTGF-β染色にてさらに発現が増強したと同時に尿細管の萎縮が出現した。4ヵ月目では尿細管萎縮がさらに亢進し, 一方で各種タンパクの発現はコントロール群と変化が見られなかった。αKlothoでは経時的な推移を評価すると2ヵ月目と比較し4ヵ月目では発現強度の減弱を認めた。【考察】 EMT関連マーカーはCNI腎症の初期に発現することから早期診断マーカーとなる可能性が示唆された。またαKlothoは初期においては腎保護的に作用し発現が増強するが時間経過とともにその作用は減弱する可能性がある。

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