抄録
【目的】
近年、脳損傷者の機能回復は多く報告されている。特にマ
カクサルを用いて運動野損傷後の手の動作回復(Murata,
2008)や拡散テンソル画像を用いた内包後脚損傷の患者の運
動機能回復と赤核脊髄路のFA値の上昇が相関する(Takenobu,
2013)などリハビリテーションの有用性は神経科学的な
面からも示唆されている。しかしながらこれらを踏まえた症
例検討は乏しく、また動物を用いた基礎研究では上肢に関し
ての報告が多い。そこで今回、皮質脊髄路の損傷を認めた症
例に対し、リハビリテーションを行い、特に下肢に対しての
運動機能回復を継時的に評価を行い、比較検討を行ったので
報告する。
【症例紹介】
60歳代、右利きの女性。倒れているところを発見され救急
搬送。右放線冠、右内包後脚梗塞が認められた。発症14日後、
リハビリ目的で本院へ転院。動作レベルはFIM78点、歩行は
軽介助レベルであった。アキレス腱反射、下肢病的反射はい
ずれも陰性であり、左半身の麻痺は中等度(上田式グレード
6、Br-stステージ3)、また軽度の体性感覚障害を認めた。著
明な高次脳機能障害、認知機能障害は検査上認められなかっ
た。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、患者に説明し同意を得た。
【方法】
下肢への筋力訓練、裸足・装具での歩行訓練を積極的に行
い、下肢の随意性レベル、fanctional balance scale(FBS)、
歩行の動作分析を継時的に評価した。
【結果】
経時的に下肢の随意性レベル、FBS、歩行動作の改善がみ
られた。
【考察】
経時的に下肢の随意運動、動作能力の改善が認められた。
脳血管障害後、ヒトにおいて下肢の機能回復は上肢と同じよ
うな回復曲線を描くとの報告がある。(Duncan, 1994)今回
の結果は過去の報告(Takenobu, 2013)のような神経基盤の
変化があったのだと示唆される。理学療法においてこのよう
な変化を見据え、患者様にあった治療プログラムを構築して
いくことが重要であると考える。