移植
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成人脳死片肺移植におけるマージナルドナー肺の活用例
前田 寿美子菅沼 良恵上野 秀子田村 璃紗柳田 早苗蓮実 健太梅田 翔太井上 裕道井上 尚中島 崇裕千田 雅之
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s297_2

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抄録

【背景】レシピエント候補の状態悪化により今以上の待機が困難な場合、マージナルドナー肺を最大限活用して移植を行うことがある。【症例1】移植時55歳男性。原疾患は特発性間質性肺炎。移植直前は高度右心不全のため紹介元入院中。待機123日で脳死右片肺移植術実施。ドナー肺の右上葉、右S6、左下葉は肺炎で、喀痰培養は緑膿菌が陽性。単施設での受諾となったため、右中下葉と左上葉を採取し、左上葉は反転して右上葉として移植、中下葉はそのまま移植した。移植後第11病日に下肺静脈血栓のため、右下葉切除を追加。TRPGは65mmHgから14mmHgに低下し、第70病日に酸素吸入なしで退院した。【症例2】移植時49歳男性。原疾患は特発性間質性肺炎。移植直前は右下葉の肺炎で紹介元入院中。待機336日で脳死右片肺移植術実施。ドナーの右下葉は肺炎で、喀痰培養はセラチアが陽性。右下葉を切除し、上中葉のみを右側に移植した。右下葉の気管支断端は区域支にわけて絹糸で結紮閉鎖した。TRPGは37mmHgから23mmHgに低下。第78病日に労作時NC4Lで退院した。【結論】マージナルドナー肺を最大限活用した一側肺未満の片肺移植であっても、急性期を乗り切ることが可能であった。移植肺のサイズが小さくても、片肺移植であれば非移植側の肺血管床を温存でき、移植前よりは良好な呼吸循環環境を構築することができる。

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